篭城戦

これは漢たちの戦いの記録である。

今日もオレは発着場と言う名の戦場に降り立った。
今日の発着のメンバーは……

・ガイ男(グリコ3つ分の攻撃力)
・マエダ(我らが007!)
・ちっちゃいオッサン(天才肌のダメ人間)

ああ、今日は終ったな。


21:20
予定よりも早くついたオレは誰よりも早く仕事を始める。
ハッキリ言って、この面子じゃ終るものも終らないからだ。
荷物の区分は大きく分けて二つである。
市内と沿線である。
とりあえず、市内は頭を使わないと後々大変なことになるので、
オレは市内の区分場所で塹壕を掘る(区分場所の整理)ことにした。

遅れてくること10分。
他の3人が来た。

ああ、誰も来なければいいのに。

失言。
オレは未だ塹壕を掘り終えてないので、それに専念することにした。
その間、無能ども仲間たちは沿線をやっていた。
ハッキリ言って手際が悪すぎです。
塹壕を掘り終えたオレは3人に向けてこう言った。

「市内やるから誰か手伝って」

反応したのはガイ男のみ。
いや別にいいけど。
この人何言ってるんだろうって顔で見つめるのだけは勘弁してください。
お前らよりは100倍使えるから。

しばらくヘコヘコと仕事をする。
なんだかパレット(2mくらいの鉄のかご)が一向に減らない。
むしろ増える一方。
なぜだ!
意味が分からん!
そこへ局員がやってくる。

「今日、グルメなんだよね」

ぐ、グルメ!

グルメ(Gourmet[guermei])
 ?美食家。
 ?イリノイ州出身の暴れ牛。
 ?郵便局等の集配センターに届く闇の組織が垂れ流す食料品群を指す隠語。
  対人型地雷2個分と同等の破壊力を持つ。

終わった。
終わってるよ。
オッサンの相手なんかしてたらオレ死ぬよ。
しかも、ローストビーフを含めて3品も届くらしい。

あははははははははははh・・…

市内に篭城することに決定。
正直あんなオッサンを相手にしてたら1日が48時間あってもたりねぇ。

00:30
ようやく全てのものを処理することに成功。
オレはヘロヘロになりながらも仕事を遂行できた。
こんなのでは先が思いやられる。
腰が砕けそうだ。
戦士には休息も必要だ。
なぜだろうか?
仲間であるはずの発着のメンバーが敵に見えて仕方がない。
猫の手も借りたい状況なのに、誰の手も借りたくない。
ああ、こいつらが猫より使えれば多分1時間は早く終わっただろうに。

01:50
再び戦闘は開始された。
続けてトラックが4本!
発着場が見る見るうちにパレットで埋まっていく。
通常郵便は皆無。
あるのは小包のみ。
もうグルメは来ることはないと高をくくっていたが、
考えが甘かった。
全然来てるし。
東○川局を爆破してぇ。
再び篭城戦に突入。
オッサンのことはマエダに任せておけば大丈夫だ。
だって、彼はオッサンの“マブ”なんだから……
オレとガイ男は何かにとり憑かれたようにもくもくと作業をこなしていく。
しかし、オレは全然余裕。
“おまえら死ね死ねソング”を歌ってなかったし。
でも、口からは老人の繰言のように「あいつらマジ死なねーかな」を連呼していた。
その甲斐あってか仕事自体は4時30分には終了していた。
しかし、沿線は終了していない。
あれ?
確か、沿線はそんなに量はなかったような……
軽く探りを入れてみる。
オッサンとマエダは楽しそうに“おしゃべり”をしながら仕事中。
しかも、ひとつの仕事を二人でやってる。

あ、ヤバイかも!

しかし、我慢だ。
これは予想していたことだ。
マエダは心優しき男。
オッサンに強く出ることが出来なかったのであろう。
ここは手伝って、さっさと仕事を終わらせなければ。
とりあえず、沿線にある大型と呼ばれる青いケースを処理する。
次に入力されていないグルメを入力。
しかし、一向に入力されたものが運ばれる形跡はない。
二人を観察してみる。
パレットの積み直しをしている。
二人で同じパレットのヤツを。
その時、オレの中で何かが弾けた。

おまえら仕事ヤル気あんのか!

……とは口から出ることはなかった。
完全にキレたオレは局員に任されたパレット一杯のチルドを一人でこなすことにする。
チルド室に一人でこもるオレ。
大声で悪態をつく。

あいつらマジで終わってる!

仕事をなめてんのか!

ホント終わってるよ。あの二人!

……ふたり!?

初めから敵は二人いたのか……

これはちっちゃいオッサンと死闘を演じる漢たちの記録である。